
KPIを設定することの重要性は、
マーケティングである以上、動画でも変わりありません。
「動画マーケティングでは、何をKPIとして設定すべきか?」
この問いに対して、あなたはどんな回答が思いかびますか?
「動画なんだから、やっぱりブランドリフトでしょ。」
「いやいや、ウェブである以上、結局CPAなのでは。」
色々な意見があると思います。
弊社は、
動画だけでなく、
デジタルマーケティングだけでもない、
この両者に関わるサービスを提供しています。
そんな弊社が、
色々な動画制作会社や、デジタルマーケティングの専門家と
ディスカッションを重ねた結果わかった、
動画マーケティングのKPI設定においてよく見られる
5つの間違いについて説明します。
マーケティング・ファンネル
まずはこの、マーケティングファンネルをご覧ください。
広告・マーケティング担当者であれば珍しくもなんともないものですが、

大前提として、
企業の目的は利益を上げること
そしてその利益は、売上をたてて初めて発生します。
たくさんの消費者が、このファネルを左から右に移動すればするほど、
企業にたくさんの売上が発生します。
商売の原理原則です。
その観点では、マーケティングの目的とは、
消費者のファネルの左から右への移動、これを促進すること、
と言えます。
そうなると、
マーケティング上の目的を達成できているかを判断するKPIが、
どんな指標であるべきかを端的に言うと、
「消費者がファネルを左から右に動いていることがわかる指標」
となります。
言い方を変えると
ファネルの左から右への動きと関係のない指標は見ても無駄、
ということです。
TV CM、雑誌広告のようなマス広告だろうと、
動画広告とか、バナーといったネット広告だろうと、
サービス紹介動画といったウェブプロモーションだろうと、
どんな施策でも同じです。
消費者の左から右への動き、すなわち、
- 無関心の人に、興味を持ってもらう
- 興味を持ってもらった人に、欲求を持ってもらう
- 欲求を持ってもらった人に、具体的に商品の説明をして、購買を決断してもらう
- いったん購買した人に、リピートしてもらう
こうした動きにに貢献していることがわかる指標、
そんな指標をKPIとすべきです。
動画でも同じです。
下記が、広告なりウェブプロモーションなり、
動画を使った場合のKPIをリスト化したものです。

これを踏まえた上で、
動画マーケティングのKPI設定に当たって、
よく見られる間違いがあります。
なお、正しい・間違いとか言うためには、
それを判定する基準が必要ですが、
それは先だって申し上げた、
企業の目的は利益を生み出すことで、
商品者をマーケティングファネルの左から右へ動かすことという前提に立てば、
左から右への動きを適切に把握できるのか、できないのか、
それを基準としています。
動画に限らないポイントを2点、
動画ならではのポイントを3点挙げます。
間違い① 既存顧客のリピートCPAと、新規獲得CPAを同じ基準で考える
この点は動画に限りません。
顧客獲得系の施策であれば、CPAはとても重要なKPIです。
しかし注意が必要です。
- その商品に全く興味のない無関心層に買ってもらうこと
- すでにその商品を購入し、その商品の良さをよく理解している人に、さらに買ってもらうこと
どう考えても後者のほうが簡単です。
同じ施策でも、後者にアプローチする場合のほうが、CPAは低く出ます。
CPAのみで判断すると、
無関心層にアプローチする意味はない、という結論になってしまいます。
しかし、既存顧客のみにフォーカスし、新規顧客を獲得しないと、
顧客ベースは減っていき、それを補うだけのLTVの向上がなければ、
収益の減少につながってしまいます。
CPAが高くても、新規顧客の獲得は必要です。
既存顧客のリピートのCPAと、
新規顧客獲得のCPAは別物と考えた方がいいでしょう。
間違い② 購買に遠い層でもCPAをKPIにしてしまう
購買に最も遠い層、無関心層を例に取りましょう。
無関心層が次に向かうべきは、興味・関心です。
無関心層が興味のない状態からいきなり、
「あれ?この商品なんだろう?よし買うか!」
とはならないわけです 笑
無関心の人にアプローチする施策のKPIは、
CPAなどの購買関連の指標ではなく、
「あれ?この商品なんだろう?」
「この商品知らなかったな。どういうものか調べてみよう」
無関心から興味に変わる気持ちの変化、そんな気持ちの変化として現れる行動、
その行動の代理変数です。
- アンケート調査でわかるブランドリフトとか態度変容、
- 数値化できる指標としては、SNSの、いいね!などのエンゲージメント指標、
- 動画だったら、視聴回数とか視聴完了数、
- ウェブサイト滞在時間、商品ページの滞在時間
などが考えられます。
こうした代理変数は色々とあるので、複数のKPIを設定しても良いでしょう。
間違い③ 動画の再生(開始)数だけを見る
ここからは動画ならではのポイントです。
動画ならではの指標として、
- 再生開始数
- 再生時間
- 再生完了数
などがあります。
無関心層に興味を持ってもらうという目的で動画を作った場合、
再生開始数が多ければ多いほど、
「なんだろう?」
と興味を持ってくれている人が多い、と考えられます。
ただ、再生開始数が多くても、
再生完了数が少なければ、
「自分には関係ないな」
「この動画つまんないな」
「この商品よくわからない」
と思って動画から離脱している人が多いことになります。
ファネルの左から右に進んでないわけです。
無料動画プラットフォームで測れるような、
再生回数だけでは不十分だと言えます。
間違い④ 動画の効果を計測しない・不適切な指標をKPIにする
商品やサービスの説明動画を作ってウェブサイトに置くようなケースで、
効果を計測していないケースが多いようです。
しかし、せっかくお金をかけて動画を作ったわけなので、
KPIを設定して、効果を判断すべきです。
ただ、その効果を計測しようと思った場合、
無料動画プラットフォームを使うケースが多いようです。
これには問題があります。
興味や関心であれば、
無料動画プラットフォームで測れるような、
再生回数や、その動画を高く評価したかどうか(SNSで言ういいね!)、
確かにこうした指標で、
ある程度、興味や関心を測れるでしょう。
しかし
商品やサービスの説明動画であれば、
- 興味・感心のある人に、具体的な詳細を説明して、欲求を持ってもらう、
- すでにその商品を買いたいと思っている人に、競合商品対比の優位性を伝えて購買を促す
などが主な目的となるでしょうが、
欲求や購買の決断をしたかどうかは、
動画の再生回数とはあまり関係ありません。
動画を見た人が、
ファネルの右側に移動し、
購買欲求・実際に購買したかを測るためには、
- 動画から申し込みページへの遷移数
- 動画経由でのCV数
などが適切な指標でしょう。
無料動画プラットフォームではこうした指標はなかなか測りづらいものです。
注意点⑤ 短期的な指標のみをKPIとする
動画は記憶に残りやすいものです。
購買一歩手前の見込み顧客を相手に、購買を促す動画を配信する場合、
動画を見た直後にコンバージョンしなかったとしても、
その後、見込み顧客が他社商品と比較したときに、
初めに見せた動画が心に残っていて、
結局その企業の商品を買うことに決める、
という購買ステップも十分に考えられます。
そうなると、
動画マーケティングのKPIの設定には、
アトリビューション的な考え方も必要です。
まとめ
- 消費者のマーケティングファネルの左から右への移動
- これを表す指標が適切なKPI
商売の原理原則に基づき、
シンプルにまとめてみました。
ここで、最後の最後でちゃぶ台返しのような形になりますが、
ここで指摘した5つの間違い、
実はよく考えてみると、どれもこれも、言われればなんのことはない、
デジタルマーケティングをやっている人であれば、当たり前に意識していることです。
それなのになぜか、
普通のネット広告では意識されていることが、
動画となった瞬間に別物だと意識されてしまう傾向があるようなのです。
動画とか動画以外とか関係なく、
商売の基本に立ち返って考える、
それが重要なのだと思います。